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2010年7月28日
公共投資縮減、低価格競争... 厳しすぎる建設業界の現状(7)

 

<将来、道路は穴だらけに? 若者の建設離れが深刻化>

 ――若者のホワイトカラー化が進んでいます。建設業のように太陽の下で額に汗する仕事から若者が離れていってしまっているように思えます。人材の確保と育成についておうかがいします。

大分県建設業協会 梅林秀伍会長 梅林 とても残念なことなのですが、高校の土木科が少なくなってきています。かつては大分県内にも数多くの土木科があり、そこの卒業生たちが第一線で活躍してくれています。今は土木科を希望する学生が減ってきており、定員割れを起こしてしまうくらいにまでなってしまいました。そのため学科を維持することができなくなったのです。私はこの動きを大変憂慮しております。20年後、30年後にまともな橋りょうや構造物をつくることができる技術者がどれくらいいるのでしょう。この若者の土木離れが業界の未来に暗い影を落としていることは間違いないと思います。

 川畑 建設業はかつてドカタという蔑称で呼ばれていました。それがどこか尾を引いているのかも知れません。社会的なステータスが低すぎることが若者の建設離れの一因となっているのだと思います。公共財をつくるという仕事は本来誇りを持てる仕事だと思います。ところが現実は逆なのです。後ろ指を差されるとまでは言いませんが、何となく遠慮しながら仕事をしているという感じが拭えません。建設というのはすばらしい仕事であるという認知を得ることが重要ですね。

 谷村 私は学生の頃、アルバイト先の親方から「教えてやる、お金を儲けるには人の嫌がる仕事をするんだ」と言われました。人が嫌がる仕事、つまりきつい、汚い、危険ないわゆる3Kの職場で働くことがお金を稼ぐには一番の道であるということです。私はなるほどと思いました。人が嫌がる仕事に携わるということは、そうであっても収入が多いということがないとバランスがとれないのです。今、建設業に人が集まらないという問題の根本だと思うのは、ハードワークにもかかわらず収入が低くなってしまっている点だと思います。そのうえ、報道などによって建設業は悪いイメージを負っています。これでは人が集まるはずがありません。ここまで考えて、公共投資の金額を今一度見直していただきたいと思います。

 ――建設業に人が集まらなくなっている現状は分かりました。そして、その原因は誇りを持って仕事に当たれていないということと、金銭的な理由があるのですね。

 梅林 加えて言うならば、ものづくりに対する意識の低下があるように思います。日本は古来、高い技術力で国を立ててきた歴史があります。山口県岩国市の錦帯橋や伊勢神宮など、すばらしい建築物が日本にはあります。これらは数十年に一度解体して、老朽化下部分を取り替えるなどのメンテナンスをやっているのです。建物を長持ちさせるためというのも大きな理由ですが、もう一つ、理由があるのです。それは技術の継承です。匠の技を継承していくために過去の建築物をバラバラにして勉強させてもらっているのです。こういう具合に日本は高い技術を維持してきました。けれども、今は継承すらままならないような人材難に陥り始めています。これは、日本人が持っていた技術に対する思い、言い換えるならものづくりに対する意識の低下があるように思えます。

 ――意識が低いから、建設や製造、農業に従事したがらないということですか。

 梅林 ものをつくるということには喜びがあります。この感情を幼い頃から学んでいただきたいのです。大分県では技能士会が中心となって竹馬や竹とんぼを子どもと一緒につくるイベントを実施しています。このような活動を体験した子どもたちはものづくりの喜びを知ってくれると思います。この心が将来の現場を支える人材を輩出してくれるのです。人材難と言われますが、雇用情勢が厳しいことがあり、就職希望者は多くいるのです。ただ、モチベーションの違いで長く勤めてくれる人とそうでない人とが分かれてしまっています。自分は将来子どもができたときに、この建物はオレがつくったんだぞと言いたいという若者もいます。そういうものづくりに誇りを持てる人にこそ、建設業界に入っていただいて次代を担ってほしいのです。

 川畑 梅林会長がおっしゃるとおり、今の若者は大きく2種類の行動をとることが多いように感じます。1年未満の勤めで見切りをつけて辞めてしまう方と3年以上勤めてくれる方です。見切りも早いが、3年以上勤めてくれる方はどっしりと腰を落ち着けてくれることが多いのです。長く勤めてくれる人材がどれだけ社内にいるのかが、技術の継承という問題を解決してくれるのかも知れませんね。

 ――収入、周囲の評価、ものづくりの喜び。すべてをいっぺんに解決することは難しいですが、公共財をつくることは大切な仕事です。ぜひ若者にも誇りを持って仕事ができる環境をつくってあげたいですね。

(つづく)
<出席者>
大分県建設業協会 梅林秀伍会長   大分県建設業協会
  梅林秀伍会長
長崎県建設業協会 谷村隆三会長   長崎県建設業協会
  谷村隆三会長
宮崎県建設業協会 永野征四郎会長   宮崎県建設業協会
  永野征四郎会長
鹿児島県建設業協会 川畑俊彦会長   鹿児島県建設業協会
  川畑俊彦会長

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