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2012年4月10日
これからを担う人材育成こそ業界の急務(前)

 

(社)福岡県建設専門工事業団体連合会 会長 杉山 秀彦 氏

 遡れば自民党の小泉政権のときから、公共工事が無駄だという捉え方が主流となった。公共投資額は、年々削減され、その結果、日本を支えてきたインフラの安全性に歪みが生じ始めている。将来的に、橋や道路、学校、住宅などはますます老朽化が進み、建設業の果たす役割はそれだけ大きくなる。にも関わらず、若年層の建設業界離れは加速の一途をたどっている。労務単価の低下や、社会保険未加入問題など業界を取り巻く環境は厳しいが、日本の持つ素晴らしい技術を継承するには、業界が一体となって問題にあたる必要がある。(株)スギヤマ(福岡市東区)取締役会長で、(社)福岡県建設専門工事業団体連合会会長の杉山秀彦氏に話を聞いた。

(聞き手:近藤 将勝)

<業界を取り巻く厳しい現状>
 ――職人問題のなかで、労務単価や職人の給与の問題が大きく取り沙汰されています。また、若い人が職人になりたがらないという問題もあります。業界を取り巻くこれらの問題に対して、杉山会長はどのように考えていらっしゃいますか。

0410_sugiyama.jpg 杉山 本当におっしゃる通りです。2008年のデータだと思いますが、建設業――とりわけ現場で働く人の年収は、370万円くらいでした。そのとき、ほかの産業――たとえば自動車産業の場合ですと年収460万円くらいで、その差は100万円ほどです。また、自動車産業は主に屋内での仕事ですが、我々の場合は屋外での仕事が多いです。夏に自動車産業の方々が熱中症で倒れた、命を落としたという話はそう聞きませんが、建設業界ではある話です。夏の熱い日や冬の寒い日も現場にいなければならないといった作業環境や、年収のことも考えていくと、建設業界は劣悪な環境にあると言えます。そのような環境のなかに、若い人が入ってくるのは非常に難しいでしょう。

 昔ですと、生活するためにはまず働かなければならなかったのですが、今の時代は"中産階級"と言われる方々が多く、子どもが1人働かなくても、たとえ"ニート"の状態でも生活ができてしまいます。

 そういった状況がありますから、作業環境が劣悪と言える建設業界には、目を向けてもらえません。今、日本の経済は停滞していて就職難という状況です。建設業界自体も人を集める環境にあるにも関わらず、業界になかなか若者が集まらないのは、そういったところに理由があるのではないでしょうか。

 そのような状況のなか、我々としては「建設業界はやりがいがあるんだよ」というかたちでPRを行なっています。たとえば、東日本大震災の際に「堤防は役に立たなかった」という話があります。しかし、もしあの堤防がなければ、命を落とされる方の数はもっと増えていたかもしれません。津波の規模が想定外だったということはあったのでしょうが、堤防があったおかげで命を失わずにすんだ人も大勢いたと思います。「コンクリートが人を守る」「コンクリートが日本の安心安全を守る」といったことを、きちんとアピールしていければと思います。

 ――建設業界を取り巻く問題として、社会保険の未加入問題があります。国土交通省は、今60%程度まで上がってきている加入率を80%まで上げる方針ですが、これについてはどのように思われますか。

 杉山 そのデータについても、果たしてどこまで調査したのだろうか、と思いますよ。建設業は、重層下請のかたちになっています。国土交通省は、元請業者と下請の設備業者であれば、一次下請にしかアンケートを取っていないのではないかと思います。

 一次業者であれば社会保険に加入しているところが多いと思いますが、加入していない業者の方が安い価格で発注できるという理由で、ゼネコンがあえて加入していない一次業者を使用するというケースもあります。一次業者も、自分たちの社員に関しては加入していても、社員の頭数を減らすことで企業としての負担を減らし、自分たちの社員を"一人親方"にしてしまう。一人親方は事業主ですから、一次下請業者は社会保険の負担をする必要がありません。そうして、一人親方で何人かのグループをつくらせて、仕事を与える――そういうかたちになっています。

 国土交通省の調査は、おそらく元請業者や一次下請業者を中心にアンケートを行なっているものと思われますから、社会保険の加入率としてある程度高い数値が出ているように見えます。しかし、全体的なところで見ると、実際の数値は違うのではないかと思います。国土交通省も方針を打ち出した以上は、新年度から何らかの調査方法を考えなければなりません。元請業者と一次下請業者だけでなく、二次も三次も、現場で働く人が保険に入っているだろうかというチェックをしてもらいたいと思います。

(つづく)
【文・構成:中山 俊輔】

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