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2012年4月11日
これからを担う人材育成こそ業界の急務(後)

 

0411_sugiyama.jpg 杉山 二次下請業者は、社会保険に加入しているところももちろんありますが、加入していないことが多いです。そういう状況を打開するためには、元請業者が消費税のように明快なかたちで、「とび工事については社会保険料をいくら取りますよ」といったかたちにすればいいと思います。そのうえで「二次業者に工事を発注した場合、一次業者がその分の社会保険料を負担します。そして、一次業者が負担した分については元請であるゼネコンが負担します。だからきちんと保険に入らせてくださいね」というかたちで、社会保険に加入してもらいます。そうでなければ、「加入するための金銭的な余裕がなくて、入れないものは入れない」という話になります。そして、そういった人を工事に入れてはいけないとなると、工事自体がストップしてしまいます。

 一次下請業者も、管理、営業だけで、職人さんを持たないところが増えてきました。まずは公共工事からでも、そういったかたちを早くつくっていく必要があります。「国民皆保険」という言葉があるように、社会保険に加入するのは義務ですから、それができない環境にあるということは非常に厳しいです。
 今は、そういうところを削れば、なんとかやっていけるということでコスト競争になっていますし、入っていない職人を使うという話になってしまっています。

 しかし、職人さんに優しい環境づくりを行なっていくことで、若者が入りやすい状況にできます。新卒を募集するのも計画をしっかりつくって、社会保険に加入していなければハローワークに持って行っても受理されません。
 それともう1つ、月給ではなく日給というかたちも、若者にとって魅力を欠くものと思われています。日給制ですと、いつまで経っても"日雇い"というイメージが強いですし、これからはサラリーマンと同じように月給制にしていかなければなりません。事業主としては、日雇いの方が人件費を安く抑えられますが、働く人にとっては月給制の方が安定しています。
 実際、建設業の現場で、現場に出ている人は50代が多いと思います。我々も努力して、今のような状況を改善していかなければ、若い人を呼び込めないでしょう。

<建設業界に対するイメージの払拭を>
 ――国は、公共工事が無駄だという捉え方で、公共投資を削る方向に向かっていきました。国の建設業に対する姿勢にも、問題があったのではないかと思います。

 杉山 たしかに、誰も走らないところに道路をつくったりするのは無駄だと言えます。もちろん、そのような無駄な公共工事を行なう必要はありませんが、その一方で、必要な公共工事までも削るべきではないでしょう。
 私がそれを一番実感したのは、2009年7月に、九州自動車道でがけ崩れが発生して、福岡ICから太宰府ICまでが通行止めになったときのことです。その際、都市高速の必要性を再認識しましたね。高速道路を走らなくても太宰府から都市高速を利用することで、福岡ICから高速道路に乗ることが可能ですから、物流的にはストップすることがありませんでした。都市高速がなければ、もっと大きな問題になっていたと思います。

 ―― 一般のメディアは、"小さな政府"という路線が正しいという観念に縛られているようで、建設業界をバッシングするような報道をしています。それが、建設業界のイメージを非常に暗いものにしていると感じますね。杉山会長は、若者に対して「こうあってほしい」というような要望などはありますか。

 杉山 建設業の大きな特徴として、自分のやった仕事が目に見えて残るということがあります。「あの建物は自分がつくったんだ」「あの橋も自分がつくったんだ」というように、自分のした仕事に対して目に見えるかたちでやりがいを感じることができます。また、この仕事はデスクワークではありませんので、身体を動かすことが好きな人には良いと思います。ただ、この業界はまだ労働条件が厳しいところがありますから、少なくともほかの産業と同じレベルの年収を保障していかないといけません。たとえば、残業代がきちんと支払われていないといった問題もあります。その結果、労務費から考えれば安くなっていますが、労働環境の向上という観点からは改善していかなければなりません。

<若者の呼び込みと高齢者雇用の問題>
 ――今後、専門工事業のなかで、業界団体が果たす役割は大きいと思います。これからどのような方向性で進んでいかれるのか、教えてください。

 杉山 建設業界はやりがいがある仕事だということをPRしていき、若い人をこの業界に呼び込んでいきます。そして、若者にきちんとした教育、技術継承を行なって、優秀な技術者に育てていく――早い話、次世代の人材の育成ですね。公共投資額の減少や景気の低迷から建設需要が減少していくなかで、バランスの良い環境をつくっていかなければなりません。現状、元請業者の数が多すぎるために、受注の段階で価格競争になっています。また、働く人の数も多いため、労働力も安く使われています。今後、経済の流れ的に企業数は淘汰されていくのでしょうが、働く人に優しい会社が残っていかなければ、将来的に若い人はこの業界に入ってこないでしょう。

 それと昨今の問題として、高齢者雇用があります。これまでは、「若い人にどうやって入ってもらうか」ということを考えてきましたが、これからは高齢者のことも考えていく必要があります。屋外作業は体力が落ちている高齢者にとって危険性がともないますが、ベテランの方々は年齢を重ねてもあまり腕が鈍ることがありません。そのため、これからもお願いしていかなければなりません。

 今、左官工事は仕事が少なく、職人の数も減少を続けています。このまま職人の数が減少していった場合、今後、仕事が増えたときに左官職人がいない、足りないということになるでしょう。我々は左官工事も含め、"職人の技術"という日本の素晴らしいものを、これからもきちんと残していきたいと考えています。

(了)
【文・構成:中山 俊輔】

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