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2014年2月 3日
追い風吹く型枠大工業界、結束強め、挽回を図る(前)~福岡地区型枠工事業福友会・池之上和夫会長

 

 全国的に人手不足が叫ばれる建設業界。なかでも、建築物の躯体を司るとび・大工・鉄筋の職人不足は深刻の度合いを極め、関東地区では4割近い事業者から人手不足の声が挙がる。福岡地区の大工工事業者でつくる事業者団体・福友会(福岡地区型枠工事業福友会)の会長を務める池之上和夫氏に、現状と展望を聞いた。

(聞き手:弊社代表・児玉 直)

<サカサマ時代の到来か 型枠大工業界の現状>
 ――さっそくですが、建設業界のなかでも型枠工事は、人手不足と単価の急騰が著しい職種ですね。私は「サカサマ時代」と呼んでいるのですが、職人の側に風が吹いてきたのではないですか。

 池之上 捉え方は人によって違うでしょうし、会社によっても違うでしょう。「今までの単価が安すぎたのだから、上がるのが当然だよ」とおっしゃってくれる方もいれば、逆もいらっしゃいます。ただ、職人不足が著しいことだけは間違いありません。同業者が潰れ、若い職人が業界に入って来なかったのですから、仕事が増えれば職人不足になるのは当然です。10年ほど前から予想していたことではあるのですが、「やっぱりこうなったか」との思いはありますね。

 ――実質的には、単価の上げ幅はどれくらいですか。

 池之上 平均すると15%程度でしょうか。実際には現場の種類などでまちまちなのですが、ゼネコンさんが積極的に職人の確保に動いていますので、大工の要望が通りやすい状況と言えます。同業各社の状況を聞くと、ゼネコンさんから接待のお誘いを受ける話も珍しくありません。状況は、数年前とは逆転しています。

 ――ゼネコン側も工期の遅れが出ないように躍起ですね。

池之上和夫2 池之上 大変だと思いますよ。そもそも元請の粗利が10%前後であるにもかかわらず、今のように単価が15%も上がれば逆ザヤは避けられません。資材関係も上がっていますし、1年以上前に受注した物件はとくに厳しいと思います。ゼネコンの担当者のなかには、表面的には穏やかでも、内心では「今に見ておけ」と敵意を持つ方もいるそうですし、そう思われるのも仕方がありませんよね。
 ただ、我々職人は、義理と恩義には敏感です。厳しい時期でも大工を大事にしてくれたゼネコンの現場はほとんど遅れていません。これは、今後のお付き合いでも変わらないと思います。

 ――社会のために良い建築物を建てようと、一致協力できないものでしょうか。

 池之上 厳しい事情がわかるものですから、単価の面で協力するのはもちろん、いろいろと気も遣います。私も昨年、この30年で初めてゼネコンさんのゴルフコンペに代理を立てざるを得ませんでした。逆の立場なら、せっかくの楽しい席に水を差されるのは気分の良いものではないでしょうからね。弊社の場合、お付き合いしているゼネコンさんには良くしてもらっていると思いますし、工期の面でも迷惑をかけないようにしています。


<兆しは2012年秋頃 他地区への流出は少ない>
 ――業界の風向きが変わったのは、どの時期だったとお考えですか。

 池之上 1年ちょっと前、12年の秋頃から兆しを感じていました。リーマン・ショック以降、弊社も他社と同じように売上を絞ってきていました。4、5年かけて半分に落としてきたところ、12年の半ばからゼネコンさんに動きがあったのです。結局、13年3月期の売上は20億円超に跳ね上がってしまいました。正直なところ、そこまで伸ばすつもりはありませんでしたし、消費税の増税などで先の見通しも不透明ですから、頭の痛い問題も出てきます。

 ――職人不足の顕在化は、東北・関東に大工職人が流れた影響だったのでしょうか。

池之上和夫 池之上 その影響は薄いと考えています。福岡地区から、少人数で北九州や鹿児島に遠征する大工はいますが、関東・東北となると意外なほどに少ないのが現状です。ネックとなっているのが、物価の高さと寄宿舎の少なさです。加えて、地元福岡での単価が上がったとなれば、わざわざ住み慣れた土地を離れる必要はありません。結果として、関東・東北に遠征しているのは1割に満たない状況ですし、だからこそ東京や東北の人手不足も当面解消されないと考えています。現状、東京や東北では、4割程度の職人が不足しているようです。

 ―一次下請の単価が上がり、福岡の職人にも還元され始めた、と。

 池之上 ただ、職人の日当は、今のところそれほど上がっているわけではありません。ここ数年、一次下請各社の経営が厳しかったものですから、まずはそちらの穴を埋める必要があったからです。ようやく一息ついて、「もう少し出してあげなきゃ」となりつつありますので、本格的な還元は夏頃になるのではないでしょうか。

 ――かつてのように、技能を身に付けた職人が450万円程度の収入を得ていた時代が、社会的にも一番安定していたように思います。その点の展望を、どのようにお考えですか。

 池之上 ここ最近の給与は、職人のレベルであれば350万円程度にまで落ち込んでいます。日建大協((社)日本建設大工工事業協会)は、これを600万円にまで引き上げたい意向を示していますが、物価なども考え合わせると九州ではやや下がるでしょう。まずは、550万円を目指したいところです。単価が2割上がれば420万円。そこから130万円を乗せるには、もうひと工夫が必要になります。

(つづく)
【文・構成:田口 芳州】

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<COMPANY INFORMATION>
■(株)伊佐工務店
所在地:福岡県太宰府市大佐野807-47
設 立:1980年12月
資本金:2,000万円
売上高:(13/3)21億8,295万円
URL:http://www.isa-home.jp

<プロフィール>
池之上プロフィール池之上 和夫(いけのうえ・かずお)
鹿児島県生まれ。学卒後に来福して大工としての経験を積み、21歳のときに池之上組を創業。同社は、1980年12月に(有)伊佐工務店として法人化され、90年9月の株式会社化を経て現在に至る。2012年、福岡地区型枠工事業福友会の会長に就任。


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