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2014年2月 4日
追い風吹く型枠大工業界、結束強め、挽回を図る(中)~福岡地区型枠工事業福友会・池之上和夫会長

 

 全国的に人手不足が叫ばれる建設業界。なかでも、建築物の躯体を司るとび・大工・鉄筋の職人不足は深刻の度合いを極め、関東地区では4割近い事業者から人手不足の声が挙がる。福岡地区の大工工事業者でつくる事業者団体・福友会(福岡地区型枠工事業福友会)の会長を務める池之上和夫氏に、現状と展望を聞いた。

(聞き手:弊社代表・児玉 直)

<元凶は入職者不足 解消のメドは立たず>
 ――他地区への流出ではないということであれば、人手不足の元凶はどこにあったのでしょうか。

池之上和夫 池之上 若者の入職者不足が原因であることは間違いありません。というよりも、むしろ、若者を迎えて育てるだけの余裕がこの業界になかったと表現した方が適切かもしれません。たとえば、高校生を新卒で入れると最低賃金で17万円、社会保険も加味すると1日あたり1万円がかかる計算になります。他方で、ここ数年は、それなりに経験のある職人の日当ですら1万円でした。これでは若い人を育てようという流れになりませんし、そのための原資を確保することもできません。逆に、高校生の側にしてみれば、3Kの職場で働いて月給17万円では割に合わないと考えるでしょう。コンビニのバイトの方が、楽で実入りも良いのですから、成り手がいなくなるのは当然です。

 ――職長クラスを育てる工業高校も、建設系の学科が激減しているそうです。

 池之上 そうなれば、ますます若い人は入ってきません。型枠大工の技能を身につけるには、最低でも3年の下積みが必要になります。安い賃金と過酷な作業のなかで、この3年間を耐えるだけの動機が若い人にはないのです。一方で、年が経つにつれて高齢化した職人は業界を去ってしまいます。今後、単価が上がり続けたとしても、当面の間、職人不足が解消されるメドが立たないというのは、こうした構図があるのです。

 ――職を探している若者は多いのに、職人の成り手がいないのは奇妙な話です。

 池之上 先日、役所の方が「職安に来る若者を紹介するから、職人として育ててはどうか」との提案をされていましたが、現実とはかけ離れた認識に驚かされたというのが本音です。過酷な作業であることに加え、諸悪の根源のようにマスコミに叩かれ続けてきた建設業界は、ただでさえ悪いイメージを引きずっています。この業界に転身するとなれば、家族の理解を得るだけでも相当にハードルが高いでしょう。職安に紹介されて「はい、そうですか」といって職人になる若者など、皆無に等しいのです。若者が建設業界に目を向けなくなった事情を踏まえ、職を探す者の身になって考えれば、先のような発言にはならないと思いますよ。

<業界への恩返し 若手には苦言も呈す>
 ――ところで、池之上社長は、3年前から福友会の会長をなさっているそうですね。我が道を貫くことで知られる御社が会長職に就くとは、心境の変化もあったのではないでしょうか。

 池之上 おっしゃる通り、昔からこういったお役目は好きではなかったので、当初はお断りしていました。ただ、一時期体調を崩された松本社長(前会長・松本建設工業)からの要請でしたし、40年も飯を食わせてもらった業界への恩義もあります。業界としても、言いにくいことを誰かが言わなければなりません。口の悪い私が役に立つのであればと、柄にもないと思いながらも、最終的にお引き受けしました。

 ――当時の池之上社長は60歳。ちょうど転機を迎える時期でもあったわけです。加盟各社でも世代交代が進んでいると聞きます。若い社長たちをどのように見ていますか。

 池之上 先代が残した看板に頼る傾向が強いのではないでしょうか。この仕事は多くの職人をまとめあげる必要があるため、簡単に引き継げるものではありません。そこに気づかなければ、残された道は衰退しかないでしょう。仕事に対する責任感や職人を守る気概に欠けるように感じることもあるものですから、「親父から何を学んだのか」「君らがしっかりしなくてどうする」と、彼らに対して日頃から小言を言っては嫌がられていますよ。

 ――ご自分では「口が悪い」とおっしゃいますが、まさに業界へのご恩返しですね。御社の場合、後継はどうなさるおつもりですか。

 池之上 生え抜きを競わせて後継者を決めようと考えています。これだけ厳しい現状に加え、先の見通しもできない大工の仕事を息子に無理強いしようとは思いません。幸い、息子は住宅の方に力を入れていますし、大工工事は仕事が増えて単価も上がりつつあります。若い子にとっては、良い勉強になっていることでしょう。ここ数年間の状況を見て、後継に譲るつもりです。

(つづく)
【文・構成:田口 芳州】

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<COMPANY INFORMATION>
■(株)伊佐工務店
所在地:福岡県太宰府市大佐野807-47
設 立:1980年12月
資本金:2,000万円
売上高:(13/3)21億8,295万円
URL:http://www.isa-home.jp

<プロフィール>
池之上プロフィール池之上 和夫(いけのうえ・かずお)
鹿児島県生まれ。学卒後に来福して大工としての経験を積み、21歳のときに池之上組を創業。同社は、1980年12月に(有)伊佐工務店として法人化され、90年9月の株式会社化を経て現在に至る。2012年、福岡地区型枠工事業福友会の会長に就任。


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